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考えて欲しい、そして知って欲しい東チベットの現状。

2012年12月02日 01:25

                                    23:43,12/1、麗江、中国

11/26、朝、六時過ぎに起きて外に出てみたが乗合タクシーが見当たらなかったのでまず明るくなるのを待った。
明るくなりかけた8時前、外に出てみると青空が広がっていたので、朝霧に包まれる佛学院の町を少し散歩した。
散歩の後、宿に戻ると色達行きの乗り合いタクシーのドライバーが"セダ、セダ!"と声をかけて来た。
そして9:15頃色達へ行く乗合タクシーに乗った。6.5元。

天気は良いものの先日の雪とこの寒さで道路凍結している。
途中パジェロが路肩に突っ込んだのか車体がひっくりかえっていたので一度車を止め、
乗客全員で起こすのを手伝った。意外と簡単にひっくり返せるものだ。

色達に着いたのは10:30。ここからガンツに行きたいドライバーに伝えると、
親切にもガンツ行きの乗合タクシーの集まる場所まで連れて行ってくれた。
ちょうど町の中心の様で、金の馬の像がある大きな広場の脇に数台乗合タクシーがとまっていた。

これが色達の町か。町は思ったよりも人が多い。チベタンもかなり多く歩いているし、
見た所そうでない中国人も見かける。佛学院では一切見なかった公安は、町の規模に反してかなり多かった。
乗合タクシーを止めた目の前には軍の人がライフルを持って警備していたし、大型の警察車両まで停まっていた。

タクシーを下りると、チベット族のおじさんが、"ガンツガンツ"、と僕の方によって来たので
一緒に車まで行きガンツ行きの乗合タクシーにささっと取り込んだ。7人集まった後通常出発するこの
乗り合いタクシーだが、まだ乗客は誰もおらず。

前日、凍るような寒さの部屋で2~3時間しか眠れなかったせいか流石にまだ頭が
ぼーっとしており、あたりを何も考える事なく見渡していた。
タクシーの周りにはあきらかに無意味な程多い公安。なんとなく居心地が良くないと思いながら
フロントガラス越しに外の情景を見ていた矢先、目の前に信じられない光景が飛び込んで来た。

フロントガラスの右端に、少し大きめのちゃんちゃんこのような服を来た男が視界に入って来た。
特にその男に特別気を取られた訳ではなかったが、彼の動きがすっと目に入った。


そして一瞬にして彼が炎に包まれた。


まさかの焼身自殺。

ここ最近チベット僧侶による焼身自殺が後を絶たないとニュースでは見ていた。
が、まさか自分の目の前で起こってしまうとは思いもしなかった、、、。

一瞬の事で頭では理解できなかった。
フロントガラスの向こう、約2mくらいだっただろうか。目の前を通った男が燃えている。

言葉を失った。
そして急に鼓動が激しくなった。
どうするべきか考えようとする事も出来ず、恐怖という感覚が襲って来た。
時計を見ると11:15。清々しい晴れ晴れとした日だった。

恐怖感を感じながら、ただただ彼が炎に包まれながら1歩、2歩、3歩と
ふらつきながら宛も無く歩いている姿をただただ見続けた。何かを考えるなんて出来るはずも無かった。
フロントガラスの右端から左端、その後前方に約15~20m程歩き続け、色達の中心部にある広場と
中国政府関係の大きな建物の間にある歩道に彼は倒れた。多くの民衆、警察が彼の事を見つめていた。

彼が倒れた後、視界の左の方から大きなブランケットを持った男と数人の男が倒れながらまだ炎に包まれている
彼のもとに駆け寄り、消化を試みていた。約10人くらいの男らが彼の周りに集まり、彼らの来ていたジャケットや
布、手や足で火を消そうとしていた。その時炎に包まれた彼は横たわりながらかすかに体を動かしていた。

現場周辺ではその光景を多くの人が見ていたが、不思議なことに悲鳴やパニックの様子は見られ無かった様に見えた。またか、と言った様な雰囲気さえあった。消化をしようとしている男たち以外の人々は、少しはなれたところから立ってその光景を見つめていた。


あっという間の出来事だった。


消化しようとしていた人々が周りにいたせいで、彼の姿は見えなくなり、生死はわからなかった。
炎が彼を包んでいたのは約5〜6分くらいで、その後他の民衆により消化された。

不思議な事に男が炎に包まれながら歩いている時、周りの民衆からは少なからず歓声が上がっていた。
指笛を吹くものも致し、拍手をするものや、声を出しているものもいた。もちろん、この焼身自殺が
中国政府に対する抗議であり、多くのチベット人が同調しているのも理解は出来たが、
目の前で一人の男が命を落とそうとしているのにどうしてそのような賞賛ができるのか?

僕にはわからなかった。

そしてあの大きなブランケットを直ぐ持って来た男があまりにも駆け寄るのが早かった事が気になった。
あたかも事前にこの事が知らされていて、無礼で申し訳ないが、そうする事が決めてあったかの様な流れにも見えた。無論、彼は死を覚悟していたと思う。

その後、周辺に居た約10名程の警察らが直ちに男を囲い、プラスチック製の小さなパーティションのようなもので横たわった彼から視界を遮った。そして周辺警備のためにやく20-30人の公安が近くにいた民衆たちにここから出ろ!というような事を言いながら一定区間から追い出し、立ち入り禁止の区域をはった。
僕が乗っていた車はその立ち入り禁止区間の中で、包囲網を張っている警察の直ぐ内側にいた。
車両の周りにも2名程の警察がいた。

正直生きた心地がしなかった。中国政府がもっとも見られたくない現状を見てしまった訳で、もし警察に日本人が
車の中にいると悟ってしまったら、、、と車の中で怯えていた。

それに一番心配だったのはこのまま暴動に発展し、騒ぎがエスカレートしてしまったら、
警察が発砲するなんて事もあり得る。
そうなってしまえば、ここを出れなくなるばかりか捕まってしまう可能性だってある。

後部座席にしゃがみながら、当たりを見渡す。
足はガクガクと震え、呼吸はまだ荒いままだった。

まさか自分がこんな現場に遭遇するなんて。
炎が付いたのを見てからの緊張感はすごかった。
カメラは撮ろうと思えば取れた。窓ガラスは傷が多いため、外から中はみずらいためばれる事は無いだろうと。
民衆の視線も男の方一点に集中していた。誰もこちらを見ているものは居なかった。
でも後からそう思っただけで、燃える男を見た瞬間からただ彼を目で追う事しか出来なかった。

そして11:35頃、男は警察車両にのせられ、また民衆の歓声と共に走り出して行った。

その後の町の雰囲気は嫌なほど落ち着いた。
周辺に残った多くの民衆はこの出来事に着いて話しているかのように見えた。
包囲網はあっという間に解除され、そしてドライバー達ががまた呼び込みを開始した。

タクシーのドライバーが他のタクシーに人が集まりだしたと言い、別のタクシーに移ることになった。
出来るだけ顔をジャケットで覆って、見つからないように別の乗合タクシーに乗り込んだ。
早く車が出発してくれる事を祈りながら出発を待つ。まだ起こった事が信じられず、体が震えていた。

幸運な事に、11:41、人が集まりバスは走り出した。そしてガンツへと向かった。


- これが現在中国のチベット文化圏で起こっている現実なのだろう。-

後日ニュースでこの人この前日に周辺の省で4人の僧侶、元僧侶が焼身自殺を試み、3人が死亡。
僕が目撃した男性は元僧侶の20歳で、記事によると生死は不明という。

http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20121127-OYT1T01174.htm


このブログを書く前、本当にネットに流して良いものか迷った。
というのも、中国政府にとって都合の悪い記事などはあまり書くべきではないと思ったし、
下手をすると公安がそういった記事をチェックしている可能性もあると聞いたからだ。

最初にFBに英語でこの状況を簡単にアップした所、色んな人がシェアをしてくれた。
そして友人の写真家から、この記事はちゃんと世の中に知らせるべきだと言われた。
彼も同様に同じような経験を下記のブログで綴っている。

http://blogs.yahoo.co.jp/zvc00730/archive/2012/11/3

そして彼は、表現者として目の前で起こった現実を世に伝える使命がある、と言っている。

考えてみればチベットに行けなかった事が僕をこの色達という町に呼び寄せ、そしてこの事件に遭遇させた。

世界には数え切れないほどの美しい町や景色、大自然、そして人々の生活がある。
またそれに反して汚れ切った場所、犯罪、貧しさも当然存在する。

これまでの19ヶ月、見たいものを追いかけ、出来るだけ危険なところは避けながら世界を駆け抜けて来た。
そしてこの事件を目の当たりにした。見たくても見れないもの、見たくなくても見てしまうもの、
今回はそれが後者で、数日立った今もあの光景が頭をよぎる。
と同時に3日経った後だからわかった事、それは"伝える事"だと思う。

先ほども書いたけれど、友人が旅人も中国公安のチベット人への暴行現場を見にしており、それをブログで伝えていた。そして彼は彼の事を表現者と呼んでいたのを読んで、"少なからずこうして旅の出来事をブログに書いている。文章は誤字脱字に溢れひどいものだがそれでも一人の表現者として、美しい景色や旅の情報を伝えるだけでなく、こうした人の目にあまりさらされる事の無い生の現実を伝えるべきだ"、と感じるようになった。
そして少しでも多くの人に関心を持っていただければ、少しでも書いてよかったと思える気がしている。


今も多くのチベット僧が彼らの命を犠牲にして抗議している。

http://www.voanews.com/content/analysts-say-tibet-self-immolations-hit-new-phase/1553676.html


いつの日か彼らに彼らの望む平和が訪れるのを祈るばかりだ。

blog3DSC_6683a.jpg

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